【 HatmanDPSオーディオ民生機器モデル製作へ向けて】


第3話 音が好きすぎて


僕は生まれてこの方、「音」という存在や現象が異常に好きでして。
物理的にどんなことになっているのかを想像するフェチみたいなものです。
それゆえ絶対音感ならぬ「絶対音質感」なるものが子供の頃から育ち、備わっておりまして。
それを基に今の仕事が成り立っております。
楽器の音色を変えるエフェクターに興味を持ったのもおそらくそれによるもので、とは言うもののいざ大学で独自の研究が始まると音色を変えることよりも空気伝搬力や印象表現力のほうに傾倒し、ダイナミクス制御の研究に没頭することになります。
現在の仕事として「音空間調律バランス調整」というものがあります。
ざっくり言うと、再生空間に目的の音をどのように響かせるかをスピーカから音が出るまでの電気信号処理の段階でコントロールしてバランスを取る作業、をしています。
冒頭でも少し触れましたが、音は様々な物理現象が複雑に絡み合いながら拡散や伝搬をしていくものです。
単に空気を振るわせながら伝わり耳に入って鼓膜から脳へ伝わる、というだけのものではないんですね。
学生時代の理科の時間に登場するような物理現象を考えるときには他の現象との絡み合いや摩擦などは便宜上一旦無視するように考え計算することがほとんどです。
実際目の前で起きる現象は環境や状況の影響が無視できないレベルで発生します。
それは再現性のない無限の条件がたくさん重なりますから単純な机上の理論で片付けることが出来ないのです。
とはいえ技術を実用レベルに持っていくには、それらをきちんと理解把握して、的確に制御できるようになる必要がありました。
しかしそれを電気信号処理の段階でコントロール出来るとはあまり考えられておらず、それを実行できる機器などが存在しなかったのです。
存在しなかったのです、はちょっと語弊がありました、イコライザのように音色の変化と共に印象も変わるようなものは存在しましたが、全てが音色の変化と一括りになっていたため、質感も響きも量感も全部ごっちゃ混ぜにして「音色」とされてきた、が正解かもしれません。
そこで本来の音色の部分、楽器や歌声などの本質的な素材の音と自然な響きを可能な限り保持したままで、音響特性の響きや拡散や伝搬を意図する位置や範囲に届けたり再生空間の反射反響のトリガー吸収を狙いとした信号処理をパラメーター調整で追い込める機器を自分の活動用に開発したのです。
音空間調律バランス調整のための治具です。
写真はその機器のうちのひとつ、SFR-01(非売品)というマシン。
Sound Field Restorater、音場復元機です。
この機種だけで音場の雰囲気をコントロールさせるパラメーターが13個あります。
2段あるのは左と右のステレオ処理をするためだったり、モノラルでも奥行きエリアと競り出しエリアとでも別々の音空間調律をするためだったり、様々な使い方をしています。
でもこれはシンプルに、いぺさんがド変態だから触れる話で、誰でも手軽に、というわけにはいかないんですよね。(当たり前!笑)
なので皆さんで手軽に楽しめるように、僕が被聴音場を想定してチューンナップしたパラメーターをプリセットさせて、まずは通すだけで聴きやすい環境になってくれるマシンを1stリリースとして作ってみたらいいんじゃないかなと相成りました次第でございます。
つづく!


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