【 HatmanDPSオーディオ民生機器モデル製作へ向けて】


第18話 音の表現力の幅


大学に入ってエフェクターの研究を本格的にスタートさせる頃には、例の「ワイルド&マイルド」をもっと細分化させて音の表現力の幅を拡げようとします。
電池で動く玩具と揶揄されるほど大学内でのエフェクターの研究はなかなか理解されなかったものの、根気よく地道に進めてコンプレッサーやイコライザなどのダイナミクス系フィルター回路を独自の解釈で煮詰めていきました。
コンプレッサーのような圧縮感にはならない音圧制御の「ワイルド」も、楽器エフェクターとしては派手で面白くはありましたが、音楽的な部分や音響的な部分としては「感度」と「立ち上がりの速さ」に分けたほうが善いなとなり、「センシティビティ」と「ゲイン」になりました。
また耳当たりの良さを、高域を削るフィルター的なものよりもダイナミックレンジの広さを維持したままで耳に優しい感じにしたいと思い、独自のリミッター回路を作り始めます。
リミッターとは設定した限界点を超えないよう抑え込むコンプレッサーと同種のエフェクトに分類されますが、コンプレッサーと同様に無理矢理押さえつけたような「パッスーン…クワァーン」という不自然な違和感が嫌で、全く別の考え方の回路にしました。
それが「リニアリミット方式」と名付けたやり方で、限界点に関わらず入ってきた全ての強さの音に対して何パーセントずつ抑え込むという動きをさせるものです。
それをやりながら、音の輪郭を和らげる「マイルド」の要素を盛り込んだら、大きな音量にしてもレンジが広いまま優しい耳当たりになったのです。
ただね、、
ぜんっぜん誰も理解してくれなかったんですよ(笑)
友人も先生も(笑)
は?で?みたいな。
えー、、なんでー、、
なので、僕としてはもはやトーン回路でもないし「キャラクター」とするのもまたイコライザみたいでシャクだったので(←)、「カラー」と呼ぶことにしました。
そしてこの「ボリューム」「センシティビティ」「ゲイン」「カラー」の4パラメーターで音量可変の要素分散化をさせる回路を総称して『スパイス回路』と呼ぶことにしたのです。
世紀末だの、ミレニアムだの、いろいろ言われ始めた頃でした。
つづく!


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