【 HatmanDPSオーディオ民生機器モデル製作へ向けて】


第36話 リアリティとは


感情が揺さぶられない平穏な状態を「凪(なぎ)」だとして、まずそれを音空間で出せるようにした、とお話しました。
それは決して「それを目的とするものとして」という意味ではありません。
リアリティのある質感を出し、よき方向に感情や感性を揺さぶるようなバランスに調整するのが真の目的です。
認知症の身内が音で昔の記憶が甦ったのを目の当たりしてから、音場再生の指標のひとつとして「記憶を呼び覚ます音」を大切にしてきました。
ノスタルジックな想い出だけでなく、肌触り、匂い、味など、音で聴覚以外の感覚も連鎖的に湧いてきて、それに包まれて浸ったとき、えもいわれぬ感触になるのではないか。
あるいは聴覚以外の五感、なんなら第六感やほかの未知なる感覚までもが、音に包まれるだけで全く新しい体験になればいろいろ役に立つのでは。
そうしたとき、「聴感フラット」だと響く音場はとてもリアルなのですが、記憶を呼び覚ますトリガーはほとんど働かないんですよ。
音楽や映画だけでなく小説を読むなど、時間を忘れるくらい現実から離れてその世界に浸り込んで夢中になるようなときに「没入する」と言いますよね。
その「没入」というワード。
没入はリアルじゃないっていうの、わかります?
五感のすべてがリンクして、感情や感覚が持っていかれる状態を没入と呼ぶのであれば、没入はリアルではなくリアリティの影響による作用です。
リアルとリアリティは、肖像画と似顔絵のような違いが近いです。
スマホで高画質な写真が手軽に撮れる時代ですから、絵が写実的であるほどその技法や技術に感嘆はしても絵の内容での感動トリガーは作動しにくいのです。
リアルを追究しすぎて実現できたとしても「そうなのかもしれないけど感動は薄い」という評価になりやすいんですね。
それよりかは「似てるー!!www」のほうが、いとも簡単に感情は揺さぶられるわけです。
そんなわけでHatmanDPS??では「リアルではなくリアリティの追究」として音空間の表現を大切に考えています。
つづく!


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